TFCC損傷
触診…誘発テストが陽性となればTFCC損傷を疑う。
@piano key test: 手を回内位に保持し一方の手で掌側からカウンターをかけ、他方の手で尺骨頭を掌側方向へ押すようにする。その時、一時的に尺骨が整復され手を離すと再び脱臼傾向となれば陽性である。
A関節不安定テスト:橈尺骨遠位端を押さえつけながら回内外をする。クリックや痛み、回内制限が出たら陽性とする。遠位橈尺関節を回内位、回外位、中間位でこすり合わせて、クリック、痛み、疼痛、不安定性が出たら陽性である。
B尺骨ストレステスト:尺屈させて軸圧をかけつつ他動的に回内外をさせて、クリックや疼痛がある場合に陽性とする。このテストは他の手関節疾患でも陽性となることが多いが、TFCC損傷患者では80〜100%が陽性になるといわれている。
C母指橈側外転テスト:回内外で保持し、母指以外をグーの形にする。母指の橈側外転を自動で行ってもらう。完全に開かないのであれば陽性である。このような患者では母指球の押さえつけによるクリップ動作を呈している事が多い。
その他MMTやROMテストを行う。
【TFCC損傷のリハビリ】
TFCC損傷のリハビリは治療法方によって異なる。また、手術をしても患者の状態によって固定期間や禁忌事項が変化するため、Drとの連携が重要である。
@
保存的治療
基本的に保存的治療を選択されることが多い。痛みが強い場合は、上腕ギプスを2〜3週間装着し、その後コックアップスプリントやサポーターにして軽い動きを行っていく。手関節底背屈運動を積極的に行っていくが、回内外運動は禁止する。順調に行けば6〜10週で完治する。
A
尺骨短縮術
5〜6週間のギプス固定をする。プレートを抜くのは1年以上あとになってからである。リハビリは@と同様である。
B
TFCC部分切除術
手術後3日間圧迫包帯固定とし、手術後2週間は前腕スプリント固定を行う。その後自動運動を許可し、徐々に底背屈から運動量を増やしてスポーツ復帰は3ヵ月後とする。
C
TFCC縫合術
縫合術は血行が良い辺縁の靱帯部に及ぶものとされている。
二週間は長上肢ギプスシーネをしてその後、短上肢ギプスシーネに切り替えて肘の屈伸を開始する。患者によっては、肩甲上腕リズムの破綻が見られる場合もあるので必要に応じて肩の運動も開始する。術後4週で手の屈伸運動を開始するが、橈尺屈方向への運動はまだ禁止する。6週でシーネ除去とし、手関節の回内外運動を開始する。術後9週以降にスプリント装着下でのスポーツ動作を開始するが、筋力低下が著明に見られるため、代償運動に注意してリハビリしていくことが大事である。
・ ストレッチでは、屈伸方向と共に橈尺方向へも行う。屈筋支帯や母指内転筋などの手内在筋のストレッチも重要である。
・ グリップ動作では、母指の伸展運動が起こりやすいため橈側外転・屈曲方向への運動も行う。中指、環指、小指で筋力差が優位に見られる場合はグリップ動作時に、尺側優位または橈側優位の動きになってしまい棒の軸が安定しない。そのため、中間位で行うよう指導する。
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