ランニングと股関節の関係
1.ランニングの動作分析
一般にランニングのスピードはスイング期(股関節の伸展)において足が地面に接地するときに生まれる水平方向の力に比例することが認められています。従って、効率のよいスプリント技術とは脚の動作によるエネルギー消費をできるだけ抑えて、足が接地する際の力を最大限に水平方向に伝えることが重要です。
また、走行中に余計な動きや筋の動員によって、アンバランスをコントロールしているとエネルギー消費が大きくなります。走効率の低下は直接的なスプリントスピードの低下につながるので注意が必要です。足が接地したときに生まれる水平方向の力には、膝や足首の動きにも関与しますが、ここでは股関節に主眼をおいていきます。
ランニング動作の期分け
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右脚:スイング期
ストライドサイクルの中で股関節の伸展がおき、地面に向かって力が働く時期。
左脚:リカバー期
ストライドサイクルの中で股関節の屈曲で脚が前に動き、次のスイング期に備える時期。
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●ランニング中における股関節周囲筋の筋活動
①殿筋
殿筋の中でも最も大きい筋である大殿筋は股関節の伸展に関与しているが、その力の発揮は股関節屈曲位からの伸展に最も大きくなります。大殿筋はリカバー期の後半に股関節の動作を前方から後方に変えて、加速させる働きをもっております。また、スイング期においても脚が接地する時に働いております。
中殿筋と小殿筋は股関節の外転とそれに伴う内外旋を行ないます。外転の機能は、ランニング時に骨盤を安定化スイング及びリカバーを円滑に行なうための重要な役割を果たしています。内旋の機能は、大殿筋の過度な外旋を食い止めるために働いております。
スプリント選手には過度な外旋がみられることがありますが、大殿筋上部繊維などの外転,外旋する力が収縮し、股関節伸展位からの力を生むのには最適な長さではなくなり、股関節の伸展トルク値が減少してしまうので好ましくありません。従ってスライド効率の向上のためにも大臀筋下部繊維(外転,内転),中殿筋,小殿筋(内旋)のトレーニングが必要です。
バランスの保たれた股関節伸展
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外旋位での股関節伸展
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②ハムストリングス
ハムストリングスは股関節の伸筋と膝関節の屈筋として働いております。大殿筋は股関節の屈曲位からの伸展に最も力を発揮することを踏まえると、ハムストリングスは股関節の屈曲角が浅くなってからの伸展に重要な伸筋であると考えられます。
ランニング動作では、大殿筋は身体の真下を通過すると働かなくなり、その反面でサポート期を通して最終伸展位までハムストリングスが働いているということになります。また、ハムストリングスでも大腿二頭筋は大殿筋の外旋機能を助ける役割もあります。反対に半腱様筋,半膜様筋は中,小殿筋と共に内旋に働きます。
内転筋群
ランニングにおいて内転筋群の最も重要な役割はリカバー期の股関節屈曲ですが、伸展の役割も重要となります。大内転筋は股関節屈曲位において強力な伸筋として働き、大殿筋との連動性が大きいと考えられています。
また、大殿筋の外転は大内転筋の運動によって抑えられています。つまり、股関節の屈曲時に大内転筋は内旋筋として働き、大殿筋による外旋とバランスをとるように働いております。従って、スクワットで股関節と膝関節を伸展していく際に、膝が内側に入ってしまうのは内転筋群と大殿筋とのバランスが乱れていることが考えられます。
しかし、ダイナミックアライメントは様々な因子が考えられるので一概には決定づけられません。あくまでも可能性があるということです。
Neutral
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Knee‐In
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