【Ring theory(リングセオリー)】 1988年lichmanは手関節の運動メカニズムについてring theoryを提唱した。 これは、手根近位列には手外在筋からの筋腱の付着がない(豆状骨には有り)ことから、近位列の手根骨の自発的な運動はありえない、と言うものです。 舟状骨と大菱形骨間での靭帯結合と三角骨と有鈎骨間の靭帯結合により近位手根骨列は運動を決定していると報告である。 少し長いので要約すると、 ・豆状骨以外には筋(手外在筋)の付着が無い。 ↓ ・運動の力を手根骨では発揮できない。 ↓ ・第2・3中手骨と遠位手根骨の関節は、ほとんど可動性がない固定部分。 ・遠位手根骨同士の関節も靭帯結合が蜜で可動性がほとんどない。 ↓ ・第2・3中手骨が筋によって力を受け、動くことで遠位手根列も一体となり動作を開始する。 ↓ ・遠位列が運動を開始することによって、radial linkを介して舟状骨が、 ulnar linkを介して豆状骨・三角骨が動き、それが月状骨に力を伝達することによって、手根骨全体の運動が完成する。 このように、手関節全体で力の伝達や固定性・可動性を活用した働きがある。 私の考え・・・ 矢状面での縦列の動きには、橈骨手根関節は橈骨と月状骨の動きで代表される。手根中央関節は有頭骨と月状骨で代表される。手根中手関節は有頭骨と第三中手骨間の強固な関節である。 複雑な機構もこのように簡略化すると関節包内運動が理解しやすくなる。 手関節の固定性がきちんと働いていれば、上肢に体重がかかるとき、手を突いて移動するときやベッドに移動するときなどに安定する。 しかし、可動性が高いのなら動きとしては十分に出るが、力学的に運動を起こすことも力を伝えることも不安定になる。逆に硬すぎるのであれば、自然な手根骨運動が起こらず可動域制限を呈することになる。 可動域をよくすれば運動は改善する、という療法士は数多くいるが、それによる不安定性増強による別部位の損傷を起こす可能性も考えなければならない。 背屈の動きは、RC-j 66.5%、MC−j 33.5% 掌屈の動きは、RC-j 40.0%、MC−j 60.0% である。(RC-J:橈骨手根関節 MC-J:中央手根関節) 動きが少ないのが、RC-jなのか、MC-jなのか触診しながら治療するべきである。手関節の正常可動域よりも少ないからといって可動域運動を無理に行えば、関節不安定性を増強し骨棘の形成や損傷につながってしまう。 |