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理学療法の知識と基礎 病院・クリニック・介護施設の勤務を経て辿りついた思いです.

脊柱管狭窄症 病態とリハビリA

原因
骨性因子
 脊柱管の形態に関与する因子として最も重要であり、脊柱管とlateral recessの前後経と形態が重要である。

 脊柱管前後径および形態に関与するものとしては椎体後方部の形態、椎弓根の長さ、椎弓の傾きおよび内板の形態、椎間関節の前額面に対する傾きなどがあげられる。

 前後径は平均1520mmであり、上位脊椎が一般に大きい値をとる。脊柱管狭窄と診断する値としては、下位腰椎でX線計測上13mm以下とする報告が多い。しかし、同じ脊柱管の前後径と横経を有していても、脊柱管の形態は異なる。脊柱管の形態は図3に示すように分類されている。正常では上位腰椎ではobal型が多いが、下位腰椎ではtriangulartrefoil型が多いとされている。           

椎間板性因子

 椎間板高位では椎間板の変性により、椎間板や線維輪の膨隆が脊柱管を前方から圧迫する因子となる。また椎間板の変性に伴う椎間板高の減少は椎間関節の変性、肥厚も惹起し脊柱管狭窄を助長する原因ともなる。

黄色靭帯性因子

 椎間板高の減少や椎間関節の回旋などの変化により、椎弓間隙が減少することで黄色靭帯が短縮し、脊柱管側へ膨隆するなどの黄色靭帯の形態的変化がある。他に弾性線維の減少、石灰化、靭帯骨化などの組織学的変化も脊柱管狭窄の圧迫因子となる。

また黄色靭帯の膨隆は脊柱の運動に伴った動的因子の1つとしての重要であり、腰椎伸展時に黄色靭帯の脊柱管への圧迫が著明となる。

神経性因子

臨床的には画像所見と症状の程度や責任高位が一致しない例もある。本症の病態には上記の機械的因子のほかに神経自体の解剖学的異常や神経根、馬尾の血行動態の問題も提唱される。

 また神経根の血行動態の特徴も重要である。神経根には末梢神経と同様、血流神経関門が存在するが、末梢神経と比しその構造が弱く、圧迫により浮腫を生じやすい。また動脈系と静脈系では、静脈系の血管壁が薄く圧も低いため圧迫を受けやすく、間欠跛行の病態は静脈還流障害が主体であろうと報告されている。


症状

自覚症状:腰痛、下肢痛とともに,馬尾神経性間欠性跛行が特徴的である。腰痛、下肢痛は約8090%、馬尾神経性間欠性跛行は6080%に認められる。
 臥位では通常愁訴はない。また、椎間板ヘルニアにみられる咳嗽などでは疼痛に変化がない。狭窄が高度になると、膀胱直腸障害などを伴うこともある。
中高年者に多いが、先天性あるいは発達異常としての狭窄症は若年者にみられる。

他覚的所見:他覚的には明らかな所見に乏しいのが特徴的である。時にアキレス腱反射の消失ないし低下、足部の知覚鈍麻などが認められるが、神経刺激症状としてのラセーグ症状などはほとんどみられない。足背動脈の脈拍は触れる。

<神経性間欠跛行>
神経性間欠跛行は、歩行により出現する自覚症状と他覚所見から、馬尾型、神経根型、そして混合型の3つに大別できる。
この神経性間欠跛行は、姿勢を変える(体幹を屈曲したり、しゃがみ込む)ことにより、下肢に出現した症状が速やかに消失して再び歩き始めることができる。長時間の立位、腰椎を後屈位に保つと同様の愁訴や下肢痛が現れ、前屈位で消失することもある。


【破行の型】
@馬尾性間欠性跛行(馬尾型)
脊柱管の中央部で狭窄された場合に両側性に発症し、保存療法では軽快しにくい。自覚症状は両下肢、臀部、および会陰部の異常感覚が特徴である。その内容は、しびれ、灼熱感、火照り、といった愁訴が多い。残尿感や催尿感に代表される膀胱直腸障害を伴っていることがある。

 また、歩行負荷により臀部から大腿後面・下腿にかけての鈍痛がある。会陰部症状の存在は、馬尾型を示唆している。他覚所見は、他根性障害を呈する。アキレス腱反射が安静時に消失している症例が多い。たとえ、安静時に認められる症例でも、歩行により消失することが多い。


A神経根性間欠跛行(神経根型)
脊柱管外側陥凹や神経根管で狭窄される。自覚症状は下肢や臀部の疼痛が特徴的である。片側性の疼痛を訴えることが多い。両側に疼痛を訴える場合は片側優位のことが多い。神経学的所見は、一般には、単根性障害を呈する。歩行負荷で狭窄により障害された神経根の皮膚髄節領域に強い刺激を生じる。

B混合型:馬尾型と神経根型の症状の混在である。

検査項目 
単純X線、ミエログラフィー(脊髄造影)、CT MRIで所見を確認する。
@    腰椎前彎の減少
A    椎間関節部の骨硬化像
B    椎弓の肥厚、硬化像
C    椎間腔狭小化
D    骨棘形成EL4/5L5/S1間でのすべり(必発ではない)
 以上の所見が種々の程度に出現する。

  本質的には原因疾患である変形性脊椎症、分離すべり症、そして、変性すべり症などの所見が認められる。

評価
症状の評価:神経原性間欠性跛行は、腰椎前屈姿勢において下肢症状の改善が得られることが特徴である。
神経学的検査:下肢筋力、知覚、腱反射を評価する。ADLの評価のみならず障害高位の診断に重要である。ケンプテストは特に脊柱管狭窄症において陽性となる。
可動域:腰椎、股・膝関節を評価する。
歩行障害:歩行の困難度、歩行可能距離などを評価する。
ADL評価:下肢症状は、立位・歩行時に増悪する。したがって、この動作に関連した家事や就労の困難度を評価する。