【肩関節とは】 肩関節は狭義としては肩甲上腕関節だが、実際には肩甲胸郭関節、第二肩関節、肩鎖関節、胸鎖関節がある。また、上肢の挙上は最終的に胸郭の動きが15%含まれているため、肋鎖関節や胸肋関節も肩関節複合体として含めている参考書もある。 関節内は、関節軟骨が関節窩、上腕骨頭を覆い、さらに関節窩では肩甲上腕関節の安定化を図るため、線維軟骨の関節唇が関節窩の辺縁を取り巻いている。また、関節唇上縁には上腕二頭筋長頭が付着し、後縁に向かい二頭筋腱と関節唇が混在し、上肢の動きに重要な役目を果たしている。 肩甲骨が胸郭に接触するのは、筋肉で覆われていない内側縁、上角、下角であり、これらには要所に滑膜包があって滑らかな動きを助けている。 【 関節唇 】 肩甲上腕関節を構成する関節窩と上官骨の形態は、骨頭半径に対して関節窩の横径が微妙に小さく、また、関節窩の接触面積を大きくするために関節唇が存在する。 関節唇は関節包と関節縁の間に存在する線維軟骨の狭いバンドである。関節唇は関節縁に付着して関節窩の凹面構造を補強し、骨頭との接触面を拡大(吸着力増大)している。凹面の深さを約5~9mm増大させているため、これが機能しなくなると20%ほど少ない力でも脱臼が生じるとされている。 肩関節唇の微細線維構築は3層からなり、網目状構造と層状構造をなして伸縮可能な最表層・表層と、関節縁に沿って輪状に走行する深層に分かれる。深部線維は関節窩と直行するシャービー線維で関節軟骨と結合しているが、関節縁に結合する線維が少ないために、一部分に大きな外力が加わると損傷を生じやすい。 関節窩と関節唇の付着強度については、上部関節唇は7割ほどに離解が認められるため上部の強度は弱く、正常でも前上方に間隙が存在する。下部関節唇は前下方がやや弱いものの、全体的に強固に関節窩に付着しているので安定性を高めている。上腕二頭筋腱の線維は上方関節唇へと移行し、下関節窩上腕靭帯は前方関節唇へと移行する。 関節唇は主に、骨頭支持とショックアブソーバーとしての役割があり、関節上腕靭帯より強く線維を受けるため、それらを介した外力を受けやすい。 関節包にはメカノレセプタが豊富に存在しており、形態学的に自由神経終末、パチニ神経終末、ルフィニ神経終末が存在している。自由神経終末は関節包に多く分布しているが、パチニ神経・ルフィニ神経は関節包と関節唇の移行部に多く存在し、関節唇自体には自由神経終末しか存在しない。関節包は主にフィードバックによる動的支持機構の中のセンサーとして機能している。 【 滑液包 】 肩峰下滑液包と三角筋下滑液包とは交通することが多く、また肩甲下筋腱下滑液包は関節腔と交通する。烏口突起下滑液包も時に関節腔と交通する。これら3つの滑液包は交通していることがあり、3つを総称して肩峰下滑液包と呼ぶこともある。 したがって、外力などで炎症などが及んだ場合、交通する関節包に熱感や腫脹が波及することがある。 【 肩峰下滑液包の滑動機構 】 肩峰下滑液包そのものに滑走能力はなく、上面、下面に存在している滑膜と脂肪組織により肩峰下滑液包は滑動することが可能になる。 術後、良好な結果を得たいのであれば早期から他動的な肩峰下滑液包と棘上筋を他動的に滑動させることが重要である。 私の考え・・・ 肩関節はただ単純な肩こりや五十肩でも肩甲骨や鎖骨・頚部の動きも見ていかなければならない。肩こりを訴えていても、原因は様々でありマッサージをしているだけでは治らない。 肩甲骨の左右差は大事な所見であり、数ミリ単位で挙上や外転を呈していることがある。 例えば、肩甲骨挙上・上方外転の所見が見られるとき、インナーマッスルが弱いために僧帽筋上部や肩甲挙筋が強く作用しているのか、広背筋の筋が固くそれに対抗して僧帽筋などが強く作用してしまっているのかを診なければいけない。 上肢下垂位での肩甲骨の位置、90°屈曲位で力を入れたときの肩甲骨の動き、最大挙上したときの肩甲骨の位置でおおよその見当はつく。 これに触診や1st〜3rd外旋の筋力差などを加えれば判別可である。 しかし、これは単純な肩こりの所見であり、痛みや痺れ、稼動域制限を伴う場合は整形外科テストが必要である。 |