<肩関節の炎症> 関節内の炎症性滑膜の増生や損傷部の腫脹・充血が生じ炎症が広範囲に渡ると、わずかな運動や関節内圧の上昇により疼痛が出現する。臨床上の特徴としては、他動的に上肢を運動させた場合、end feelを感ずることなく、激しい疼痛の出現により運動が制限される。 このような場合の目的は病態部位の安静であり、積極的な運動は避け、炎症軽減を目的とした安静を促すべき肢位・日常生活の留意点についての指導を実施する。 炎症が治まってくると、運動範囲の増大や抵抗感の増大により少しずつ痛みが増強するようになる。これらの現象は炎症後の滑膜肥厚や瘢痕組織の残存による軟部組織の柔軟性の低下による運動の制限と考えられる。 関節唇損傷や関節内異物の場合はある角度や肢位でのみ疼痛が出現、ロッキング様の関節制限が起こる。 <スポーツ障害> スポーツ障害では、肩関節自体の問題だけでなく股関節や体幹筋の低下によりボディーバランスが崩れ、肩関節筋力が十分に発揮できなくなり肩の疼痛を訴えるというものもある。 テニスや野球の投手に多く、腱板筋力も良好だが体幹筋や殿筋などが弱いため姿勢が安定しないまま競技に及び、結果として多用する肩を痛めてしまうというものである。 特に仰臥位での外旋テストで比較的軽い抵抗であっても頚部や体幹の揺れ・代償が見られる場合、頚部の機能障害の可能性がある。内旋テストで体幹が抵抗部に近付くような代償を見せる場合は体幹・股関節機能に問題があるかもしれない。 私の考え・・・ スポーツ障害の場合、肩の動きだけでなくその周囲の関節の代償運動にも注意を払えるとよい。 もちろん肩の評価は行わなければならないが、原因がはっきりとしない場合は僧帽筋中・下部、広背筋のみならず体幹のインナーマッスルも評価して問題が無い場合は下部へ移行していく。 原因が体幹の固さの場合もあるし、足部の固さの場合もある。 しかし、注意しないといけないのは患者に説明を怠ると不信感を抱かせてしまうことである。肩の治療をしにきたのに足部を触られるのは不審に思うだろう。 投球動作の動作分析ができるといいが、相当の経験者でも難しい。専門治療院の場合はモーションカメラを使うことが多い。 特に学生の場合は、なぜ痛みが起こっているのか、治療期間、自主トレや注意点などを分かりやすく伝えて、治療のモチベーションを保っていかなければならない。 |