【 関節包 】 関節包は主に関節の可動性や安定性に関与し、何層もなるコラーゲン繊維からできている。容積は上腕骨頭の二倍ともいわれ、わずかではあるが関節液が満たされ、下垂位での関節内は陰圧に保つことで関節の安定化が図られている。 関節包は後面では関節唇から始まり、前面では関節腔より始まる。 関節包には、内側前方に上・中・下に関節上腕靭帯が存在し、後方にも関節包の肥厚部がある。 これら靭帯は関節の肥厚部とする報告もあるがいずれにしろ、脆弱部分とされる前方においては重要な安定化機構である。 関節包は上腕骨の動きに伴い各部が緊張する。報告では、肩甲上腕関節角度20〜30°内外旋中間位で関節包の張力が均一となる。 関節包の内面を裏打ちする滑膜は、関節窩側は関節唇に付いており、上腕骨側は骨頭関節面の周縁に付くほか、上腕二頭筋の長頭腱に沿って結節間溝に延び、嚢状に折り返されて結節間滑液鞘をつくる。 【 肩鎖関節 】 肩鎖関節の関節包は弛緩性で薄く、その上下には肩鎖靭帯があり上方の靭帯は厚く強く、僧帽筋や三角筋の筋膜に移行する。その他、烏口肩峰靭帯、烏口肩鎖靭帯もある。 ・鳥口鎖骨靱帯(C-Cメカニズム) 烏口突起の上面から鎖骨へと上外側に走る菱形靱帯と、烏口突起基部の底部から鎖骨までほぼ垂直に走る円錐靭帯に分かれる。 これらは3つの役割がある。 1つ目は肩甲骨を吊り下げていることである。鎖骨を介して上肢を体幹に吊り下げているのは2つの強力な靱帯のみである。 2つ目は、肩甲骨が下内側に滑るのを防いでいる。肩鎖関節の肩峰面は鎖骨の形状より内上方を向いているため剪断力がかかりやすく、外力を受けると内下方に滑りやすい。 3つ目は、鎖骨と肩甲骨の動きの介達と緩衝作用である 【 関節包と筋力の関係 】 腱板機能が弱化し痛みが出ている患者には、肩甲上腕関節角度20〜30°内外旋中間位(体表では45°屈曲位に位置する)からの挙上抵抗テストが有効である。 前部の関節包は水平屈曲位より水平伸展位のほうが緊張する。そのとき後方関節包は弛緩しているわけであるが、この場合は関節安定化のために、前方についている肩甲下筋よりも後方についている棘下・小円筋が重要になってくる。 このため、屈曲挙上では前方関節包が弛緩するため肩甲下筋の働きが重要となり、外転挙上では後方が弛緩するため棘下筋や小円筋の働きが重要となってくる。つまり、屈曲挙上にて痛みが出現したなら肩甲下筋の機能障害が疑われる。その場合、外転挙上では屈曲挙上より疼痛は軽減する。 棘上筋の機能障害では屈曲位外転位関係なく疼痛が出現する。 このことは、内外旋運動でも同様である。 腱板の機能障害を有する例では、内旋位からの内旋テスト(前方関節包を弛緩させた肢位)と外旋位からの内旋テスト(前方関節包の緊張)では筋力に優位な差が出る。 その他、肩甲骨固定と非固定との筋力差で肩甲上腕関節か肩甲胸郭関節に問題があるかわかる。 私の考え・・・ 関節包はとても強靭であるために、一度拘縮すると伸張させるのに時間がかかる。損傷以外で、長期間放っておいた五十肩などでも関節包が拘縮していることがある。その場合、骨の動きも不十分で拘縮部以外の場所に痛みを訴えることも多い。無理に関節包を伸張させるよりかは、モビライゼーションやトラクションをかけて正常な関節運動を促していくほうが痛を出しにくい。 ちなみに、上肢挙上90°以上で関節圧が陰圧から陽圧に変わるとされているが、圧が変化しても関節包が捻れて安定化が増すことでスムーズな動きを可能としている。 |