<インナーとアウターマッスル> 肩甲上腕関節の動きは常に肩甲骨関節窩を基準として上腕骨が動き、適合するだけでなくリーチ動作のように先に上腕骨の動きが出現しても、肩甲骨関節窩が適合するといった協調運動が図られている。 このような肩甲上腕関節の安定した動きは、内側の筋である腱板が上腕骨頭を関節窩に適合させ、関節の安定化を図るとともに動作時の支点を得るという重要な役割を担っている。 この機構が十分に機能してアウターが働くことにより動作に必要な筋収縮を行うことができる。 これをsetting phaseといい、腱板機能が正常なら関節が適合してから上肢運動が出現するが、腱板機能が不安定なら関節が適合せず、outer.musclesの働きにより上肢運動が出現する。 肩を痛める症例のほとんどが、インナーとアウターの相対的なバランスの破綻が認められる。 <インナーの筋力測定方法> 通常、腱板筋力は内旋・外旋位角度での筋力差は認められず、常に一定した筋力を発揮する。しかし、腱板損傷が起きたときは関節包の緊張度合いにより抵抗力に差が生じる。 例えば、肩甲下筋・小円筋に筋力低下がある場合、関節包が弛緩する外旋位からの運動では筋力低下を認められるが、逆に関節包が緊張する内旋位からの運動では筋力低下を感じない事が多い。 角度を変えることにより詳細な評価とすることができる。 肩関節複合体は、肩甲骨を固定・非固定での運動によっても評価をすることができる。 徒手にて肩甲骨を固定して内・外旋運動を行った時に、非固定時と比べて明らかに筋力の増加が認められた場合は肩甲帯の筋力が不十分な可能性がある。 肩甲胸郭関節機能の問題が疑われ、代償運動が強く関与すると同時に上腕肩甲関節機能の破綻も示唆される。 私の考え… 初期評価で、患者の体幹や肩に左右差が見られることはよくある。しかし、肩甲骨の浮き上がりや外転が見られたからといって、むやみに改善すべきではない。 インナーの筋力テストや脊柱の動き、体幹の前傾や頚部の動きによって見かけ上の外転を呈していることもあるため、他の評価とあわせて治療していく。 筋力などと同時に稼動域も見なければならないが、関節包の緊張はScapular plane上20〜30°で釣り合うとされている。肩甲上腕リズムのため、20〜30°は肩関節45°にあたる。ここを基準として可動域制限をみるといい。 |